ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に演奏活動をしているヴァイオリニスト。クラシックからジャズ・歌謡曲まで幅広いレパートリーを持つ。2015年からヴァイオリン独奏作品を紹介することと、リクエストタイムなどを設けて“プロの生演奏を身近に”をモットーに「ヴァイオリン独演会」を続けている 。

演奏は、スポ根です。

※2015年6月24日、アメブロの記事※

 

「上手く弾けるのには理由がある。上手く弾けないのにも理由がある」

 


少なくとも楽器演奏を仕事にしていない方々は、

音楽家が練習するというと、

薄暗い練習室で脇目もふらず髪振り乱してショパンとか弾いていて、通りがかった通行人がガラスの仮面のキャラクターみたいな白目剥いて恐れ戦いている

とか、

クラシック音楽のレッスンというと、

先生「うーん…何と言うかね、君にはベートーヴェンの情熱を表現するだけのハートが足りないんだなあ…良いかね、音楽だけじゃない、生活のなかでもっと感情を表現したまえ!」

とか、

バンドの練習=スタジオ

とか、

そんなイメージが定着している感じがしないでしょうか。

面白いから、それは望ましいことだと思います( ̄ー ̄)

のだめカンタービレは良い意味でそういったイメージと真逆の「音大あるある」を描いて面白い作品でした。

生活スタイルは良いとして、どのようにして楽器を習得したと思われているのでしょう?


才能


によってぽーんと演奏できている、どこかそんなイメージないでしょうか。

演奏家が苦労するとしたら芸術的な解釈や表現。

メンバー同士で揉めるとしたら音楽性の違い。

そんなイメージは?

あくまで感覚的に演奏してしまう私の持論なのですが、

演奏とはスポーツです。

向き不向き、あるいは好きか興味ないといった意味での才能ならあります。

でも、「絶対音感がないから楽器は無理」

てことは絶対にないです。

絶対音感は早期音楽教育の副産物であって、楽器をするための絶対条件じゃありません。

イタリア人のヴァイオリン教授で、12歳から始めたから絶対音感はない、という方も実際知っています。音程の精度は緻密でした。

演奏家が日々何しているかというと、

練習

しています。

もっと言うと、

訓練

しています。

スポーツと全く同じです。

基礎的な技術は筋トレと一緒で、一度クリアできても終わりではなく継続しないとすぐ衰えるし、そもそも、ムキムキではないにせよそれぞれの楽器技術に応じた筋肉というのがあるんです。
ヴァイオリンでいうと、両手の小指なんからすぐ衰えますし、初めて楽器をする人には小指一本で弓を支える筋肉もバランス感覚もないので、いきなりは無理です。筋トレを続けて、筋肉とバランス感覚が見につくことで習得します。

野球選手でピッチャーなんかも、ずば抜けた制球能力によりいきなりマウンドに上がる訳ではなく、ブルペンで投げ込んでいるし、攻撃中でも黙々と肩を温めていますよね。

歌手が発声を欠かさないのと同じで、楽器でも基礎練習もし、リサイタルにかける曲なんか何度も何度も弾いて覚え込んでいるんです。


…というのを、お客様が知る必要はないのです。

エンターテイメントでお金を頂く以上、水面下でどれだけ努力したというのはゼニにはなりません。水面から見える姿の美しさが全てです。

ですが、時折、演奏家本人がそれを忘れて錯覚することがあります。

「上手く弾けるのには理由がある。上手く弾けないのにも理由がある」

とかつて先生から言われました。

当時は学生で若かったので、自分にできないことをできる人を見てため息を吐いて藻掻いていましたが、今は良くわかります。

上手く弾ける、というのは内容に無理がなく、必要な筋力とバランス感覚があり、良く身体が覚え込んでいて、楽器を持っていなくても頭の中だけでもスローモーションでもどの指がどうなってこのポイントの音程でと鮮明なイメージが出来ている状態。

上手く弾けない、というのは根本的に無理な方法を取っていたり、必要な筋力かバランス感覚のどちらかか両方がなく、身体で覚えるほど慣れていなくて、ぼんやり弾けているイメージが鮮明でない状態。

何にせよ焦りは禁物なのです。

焦りによってお尻に火が付き、的確な訓練が捗れば良いですが、大体焦ると中途半端な訓練を浅く広くやってしまいがち。

それを何とか効率化したいと考えていた時に、参考にしたのがスポーツ選手でした。

スポーツの練習って、基本はメニューが決まっていますよね。

ストレッチ何セット、筋トレ何セット、ランニング何分、素振り何回、ノック何本…そしてやっと練習試合、本番。

というように。

スポーツで基礎を怠ったり逆に無理をすると怪我にも繋がるので、きっと厳密に計算されているのでしょう。

知らんけど。

個々の選手がその上で苦手な打撃練習して帰るとか、いつでも素振りしているとか、あるでしょうけど。多分プラスアルファの部分です。

音楽においては、そのプラスアルファの部分だけで練習が終わってしまうことが多い気がする。

特に私。

というのが、色々な練習方法をマニュアル化したり、ダメなら何回、と決めるに至ったきっかけです。


これから音楽家を目指す方。

一度コンクールで優勝しても、以降は優雅にのんびりできる訳ではありません。

ドレスは着ますが、練習もそのかさばるドレスや楽譜の荷物を抱えての演奏会場入りまでの移動も、肉体労働です。


私のモットーは、

「錦は着てても心はスポ根」

です。

 

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かなり主観と趣味の入った文章になりましたが、ここまでお付き合い頂いてありがとうございます。


YukiTAKUBO; Violine