ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

ランチタイムコンサートと「夕鶴」

週末、アンサンブル・テオフィールのピアニスト植田祐加里ちゃんの出演するピアノトリオとフェスティバルホールのオペラ「夕鶴」を掛け持ちで聴きに行くという贅沢をしました。


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アノトリオの会場は母校、大阪音楽大学の学食「ぱうぜ」です。

適度なお昼時のざわめきと、美しい演奏が混じり合った素敵なひとときでした。

ヴァイオリンとチェロも大学の後輩。
みんなとっても音色がきれいで、うっとりと聴き入りました。



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「夕鶴」は初めて。

つうは佐藤しのぶさんというスター歌手、それに演出が市川右近さん、美術が千住博さん、衣装は森英恵さん、と私が知っているだけでもそうそうたる顔ぶれ。

鶴の恩返しという、さらりと語ることのできる話がどうオペラになるのか? という楽しみもありましたが、安定の演奏、歌唱、それにぐっと劇中の世界に惹き込まれ雪に閉ざされた寒村の温度まで伝わってくるような、素晴らしく美しい舞台。

つうの女性としての心情が丁寧に描かれていて、観客に訴えますね。

女性に化けた鶴、という記号のような存在が、咄嗟に激高してから急に不安になってごめんなさいごめんなさい…と懇願するという下りでバックグラウンドのある一人の女性のドラマとして感じられました。

人間の欲がどのように朴訥な与ひょうの中に湧いてくるのか、それも純粋に「欲しい欲しい」って言うから何とも残酷だなあ…と思えたり。

「助けた鶴が女性に化けて機を織ってくれましたが、約束を破って織っている所を覗いたので去って行ってしまいました」

だと、ラストの別れもこれほど辛くは思えないのですけどね。

生身の人間の存在を認識させてから別れが来ると、本当に切ないものです。


それにしても、この「夕鶴」完成度が凄かった〜

感激です。


この日はせっかくなので和装で行きましたが、なんの気無しに着物に合わせてもっていった鞄が
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鶴!

だった…

終演後に見たら泣けてきました。

他のお客様にもちらほら着物姿の方があり、素敵だな〜、と休憩時間も堪能しました。



たまには100%鑑賞する側に。
良い一日でした。


YukiTAKUBO; Violine