何年かぶりの再読になる。
バロック奏法からバッハの無伴奏ヴァイオリン作品の演奏法を解剖する解説書。
私ごとだが、現在、バッハを演奏するにあたっての自分の立ち位置を少し動かしたところだ。
ここ数年は今日のヴァイオリン演奏法の主流でもあると思われる、モダン楽器でバロック奏法を尊重した表現が出来れば良いと考えていた。できれば、いつかは多くのヴァイオリン奏者がトライしているように、モダン楽器とバロック弓を合わせて演奏するというような。
自分の採用したバロック寄りのボウイングとモダン奏法とバロックの間を揺れるような左手、右手のテクニックとのチグハグさは薄々勘づいてはいたのだが、
練習をもっと重ねれば克服できるのでは
という希望のもと、また一度覚えた奏法を変えることへの億劫さからそのままでいた。
新年度になり、新たな先生に師事することが叶った。その先生との限られた時間を大切にするため、一旦「いつかバロック弓を」といった半端な奏法を捨てることにした。
時代の流行には逆行しているかもしれない。が、最終的な目的は同じ。音楽。どっちつかずの方法を整理するだけ。
ということで、己を知るには敵を知る、というと語弊があるようだが、バロック奏法に特化した本書も読み返してみた。
前回の購読時には「いかにこの本で述べていることを取り入れるか」の視点で読んでいたが、今回は「いかに自分の奏法を異なるか」に注目してみた。
そうすると不思議なもので、より良くバロック奏法と、その「目指したところ」が見えて来る。
差異を知ると共通の目的も見えて来る。
(2021.04.17.-24.)
シュレーダー,ヤープ『バッハ 無伴奏ヴァイオリン作品を弾く バロック奏法の基本から』寺西肇訳。春秋社,2010年。(原書:Schröder, Jaap. Bach’s solo violin works: a performer’s guide: Yale University Press, 2007)