ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

コンクールへの思い

こんばんは。
 
三十路にして子供さんや学生に混じってコンクールにソロで参加している四絃弾き。です。
 
今日は私のコンクールへの思いについて。
 
 
 

そもそも、何のために受けるのか

 
私は子供の頃から合わせても数えるほどしかコンクールを経験していません。
 

 

むしろオーディションの方が多く受けています。
 
付いてきた先生や親もあまりコンクールに関心がなく、「田久保さんは基礎は荒いけどのびのび弾くからコンクール向きじゃない」と言われてきました。
 
子供の頃も、チャイコフスキーエリザベートに入賞してソリストの道を歩む、という知識もなければ、それよりもヴァイオリン一丁下げていろんな所を旅したい! と思っていました。なので、むしろコンクールよりもマスタークラスに熱を入れてきました。
 
気付いた時には大型コンクールの年齢制限をオーバーしていた訳ですが、それは後悔していません。
 
ただ、どこかで後ろ髪を引かれるというか、「一つくらい賞歴をプロフィールに書きたい」という思いがあったのか。
 
成人してから、先生に勧められるでもなく、自分でコンクールを見つけてきて先生にも「出てみますね〜」という緩い報告くらいで参加してみました。
 
いやあ、これは。
 
セッションは寝てても弾けるくらい慣れだけはしてきたのですが、コンクールという空気は予想を遥かに超えていました。
 
最初なんかひたすら震えを抑えるのに必死で何弾いたか覚えていません。
 
私、コンクールは無理。
 
そう思ってまた離れること数年。
 
あの独特の緊張感に見舞われることもなく、演奏場所や馴染みのお客様にもそれなりに恵まれ、楽しくのほほんと演奏してきました、
 
マスタークラスには毎年参加したり、先生のレッスンには通い続けることで、「変な方向に行ったら軌道修正して貰おう」という意識はありました。
 
所が、先生はともかく、マスタークラス、最初は「こんな基礎から直されるんだ」とショックも受け、物凄く得たものが多かったのですが、回数を重ねる毎に「悪慣れ」してきてしまいました。
 
もう、馴染みの先生の傾向が分かる。こういう曲をこういう感じで持って行ったら褒めて喜んで修了コンサートに推薦してくれる。
 
もちろん、毎回勉強にはなります。
 
ただ、自分でもそろそろ三十路で、頭を打つ時期にこういうスタンスだと良くない気がしてきました。
 
初めて参加した時は撃沈したけど、二度目三度目は当たり前のようにコンサートに出して貰ったあるマスタークラスを終えた時に頭をよぎったのがコンクールでした。
 
コンクールに参加してみよう。
やるからには本選に残れるようにしよう。
 
それが「大人からのコンクール」の始まりでした。
 
 
30過ぎてだんだん控室での居心地も良いとは言えなくなってきました。先輩や友人に会場で遭遇して、あちらは自分の生徒さんの付き添いであった時なんかその辺の子供さんを「私はこの子の付き添い!」との狂言に引っ張りたくなります。
 
でも、先輩の中には「俺なんか、お父様はこちらでお待ち下さい〜、言われたで! 俺が参加者やっちゅうねん笑」という強者もいます。
 
その先輩は、私よりも更にずっと年上ですが、仕事の合間にもコンクールやマスタークラスなどで研鑽を続けていて、絶えず音色に磨きがかかっています。
 
その時、むしろ堂々として良いんだ! と思えました。
 
 
ただし、四絃弾き。のようなスタンスでコンクールに挑戦するなら、一つだけ注意して下さい。
 
コンクールを利用してください。
コンクールに飲まれないでください。
 
 
私は、30代の間は毎年何かしらに挑戦する、という目標を自分に課していますが、もしも飲まれそうになったらコンクールは即時撤退するつもりです。
 
 
 
YukiTAKUBO; Violine