ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

お金の話。③ ~コンクールは実はコスパ良い~

コンクールには勿論参加費というか、審査料が必要になります。

美術展でも出展料はいりますし、語学検定でも検定料はいります。

 

規模や、音源書類審査から予選から本選まで複数回に審査が分かれているかどうかによっても違いますが、大学生含む大人が参加できるようなものだと安くて1万数千円~三万円ほどはかかります。(そのためのレッスン代・伴奏者への謝礼は含まず)

 

私も最初は「高っ!」と思いました。

でも、参加していくうちに「実はコスパ良いな」と思ってきました。

 

なぜコンクールがコスパ良いのか

コンクールが開催される会場の多くは、リサイタル会場としても十分立派なホールであることが多いです。
 
もし自力で借りようとしたら半日で5〜10万くらいはかかります。それに加えて、ピアノ使用料や調律代や控室のレンタル料、受付の人件費を加えると軽く2倍になります。
 
ジョイントコンサートというものは、出演者が複数組でそれをシェアするのですね。自主公演でなく出演者を公募するジョイントコンサートなら、演奏時間がコンクールと同じくらいの10分まで、などと決まっていたりもします。
 
それらの経費はチケット収入で賄います。自主公演にせよ、ジョイントコンサートにせよやはり自分からチケットを買って貰うのは大変なことです。
全部人の手に渡れば交通費くらいにはなりますが、難しいのが現状。
 
きちんと企画したリサイタルならぜひ来て下さい! と言えるけど、このホール弾いてみたいから…経験として本番にかけてみたい曲を演奏するから…という積りのチケットは、なかなか私は人に有償で渡しにくいです。
 
曲を練習する間も気を取られたり…
 
だったら、いっそ、コンクールでやってしまおう。
 
コンクールの参加費は、音源審査の予選から本選までそれぞれ約7000円〜2万円前後。
 
発表会でもそれくらいかかります。
 
本選ともなれば、ちゃんとしたホールで、演奏会形式で、チケットノルマや集客の心配もなく、大体は聴講できるので聴きに来て欲しい人も客席に呼べるし、審査後に有名な先生の講評(誰がどれとは分からないですけどね)や音源まで貰えることもある。うまくいけば立派な経歴になる賞歴がつく。
 
これ、ジョイントコンサートや審査の先生のクラスのマスタークラスの受講料と考えると物凄くコスパが良いと思います。
 
 
加えて、敢えて言うとコンクールの環境は最恐です。
 
いい演奏をすれば、とは言うものの、まずやはり切られるのは音程やリズムやミス。
 
審査員は減点方式で見ている。(かも)
殆どの聴衆はライバルの関係者。
 
控室のあの張り詰めた緊張感。
 
音出しが限られていることが殆ど。
 
最恐ですよ。
 
多少会場がざわざわしていたって、演奏するのに十分なスペースがなくたって、演奏を聴いていない人がほとんどだって、これに比べたら天国です。
 
いつも、コンクールの後は「これより恐ろしい本番はないからどんな本番でも来い!」と思えます。
 
先日は、「しかしまあ、わざわざ二万円も払ってこんな恐怖の半日を味わおうとは私も大概ドMだなあ」と思いました^^;
 
一度でもこの恐怖を味わったら、そりゃ次は万全の準備をします。
普段のお客さんはミスしても心がこもっていたら喜んでくれるかもしれない。しかしコンクールはそうは問屋が卸しません。自分で体感しているから、そりゃもう200パーセント弾けてやっとくらいのつもりで練習します。
 
私が求めているのはそのモチベーションです。
 
この年でそれだけ練習しようと思ったら、たとえ3万円の素晴らしいマスタークラスの受講を申し込んでいてもなかなかできません。
 
 
YukiTAKUBO; Violine