ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

丁寧に、心を込めて

ヴァイオリンの師匠の弦楽四重奏を聴きに行ってきました。

先生がライフワークにされているベートーヴェンの四重奏に、ハイドンの「5度」と、初挑戦の武満徹という挑戦的なプログラムでした。

ハイドンは安定の美しさと端正な構成力、ぴったりのアンサンブルを聴かせてくれ、最近楽譜に込められたメッセージを読み解くのが面白いベートーヴェンでは彼特有の極端な強弱が見事でさすがの円熟味。

その間の武満徹は「これが全く同じ編成、同じ演奏家のサウンド?!」と目を見張るような古典との表情の違いが見られました。

武満徹室内楽は、出てくる音がとても淡いです。
以前、作家の石田衣良さんが「17人もの演奏家が集まってこんなに淡い音楽をやる」というようなことを書かれていたのですが、ぴったりと音が重なっているからこそ、一つ一つの音がより薄く淡く聴こえ波を形成しているようです。

「こういう近代は得意じゃない」と仰っていたにも関わらず、流石でした。

またそうおっしゃりながらも新しく挑戦されるという心意気も尊敬します。

私なぞは「近現代はできるだけ今のうちにやっておいて貯金しよ^^;」なんて今から思っているほどなので…

(それでも、20代の時に勉強した武満徹のソロ作品、今暗譜で弾けるかしら…)

また聴きたいです。

林泉弦楽四重奏団の皆様、ご主人の林先生、お疲れ様でしたo(^▽^)o


さて、会場は夙川のルーテル教会


f:id:yuki-violine:20151212205040j:image

先生はよくここをコンサート会場に選ばれるので、演奏前の牧師さんのご挨拶も牧師さんの穏やかな笑顔もお馴染みになってきましたが、今回とっても素敵なエピソードをお話頂きました。

この教会は、入り口でスリッパに履き替えます。それは、ご年配の信者さんは土足で祭壇に上がられるのを躊躇われるから、という理由なのだそうですが、それによって演奏会のお客様にはご苦労をおかけします、というお気遣いのあと…

「その代わり、今お履きのスリッパを見て頂いたらお分かり頂けると思いますが、底までピカピカにしてあります。毎回、お帰りになった後、教会のメンバーで全てのスリッパを底まで拭き上げております」

ご苦労おかけしますので、せめて気持ち良く履いて頂けるようにと手間と心をかけていらっしゃるのですね。


f:id:yuki-violine:20151212205439j:image

そのスリッパ。
確かに、ピカピカ!

綻びも傷もありません。
きっと、普段お履きになる信者さん方もそのお気持ちを大切に、丁寧に履いていらっしゃるのでしょうね。


f:id:yuki-violine:20151212205555j:image

壁に掛かった旗も、手作りのパッチワークのようでした。すごく温もりの感じられるものでした。

こちらの教会、牧師さんが恐縮されるように質素だとは私は全然感じないのですが、もちろん、オペラハウスのようなゴージャスな施設ではありません。

だけど、どれだけ質素であったとしても、お迎えする気持ちが丁寧であればとても快適にゆったりと過ごせるものなのだなあと感激しました。


私は数年来断捨離に興味持っているのですが、こんな風に、質素だけど丁寧、そんな暮らしができたら良いなぁ…

また、こんな演奏会をお客様に提供したいなぁと、そんな所も感じさせられました。



YukiTAKUBO; Violine