
まだ不慣れですが…
角出しのように帯枕を使わず、お太鼓の下がもこっと丸い形の、それに左側に手先の耳がぴょこんと飛び出すのが可愛い結び方です。
しかも、半幅帯のように体の前で結んでくるっと後ろに回せるのでラク!
ラオコオンの如き奇妙な格好(©森茉莉)で汗だくにならなくてすみます。
この方法を知ったことで、写真にある扇柄の帯など、私には短すぎた数本の曾祖母の形見の帯が使えるようになりました(*^^*)
工房で長さを足して貰おうと思っていたのですが、それにしてはけっこう傷んでいてハサミを入れるのももったいないような…と何度か一重太鼓にチャレンジしてはやっぱり使えないと仕舞い込んでいたもの。
和洋問わず服はどんどん着ないと価値がないと思っているので、この方法で活用したいと思います。
この、耳を出す結び方、「何でもっと早く知らなかったんだろう!」と思ったのですが、これも着付けに慣れてきた一つのステップだろうと思います。
最近、ふら〜っとのセッションにヴァイオリンを持ってきてくださる方が増え、ついでに奏法のことをちょっとアドバイスさせて頂くこともあるのですが、テクニックの話になると私が耳タコくらい言うのが、
「上手く弾けるのには理由があります、逆に、上手くいかないのにも必ず理由があります。上手いとか下手とか、才能があるなしではなくて、必ず理由があるので、その理由に気付けて解決方法を割り出せたら上手く弾ける」
ということ。
後半は自己流ですが、この
「上手く弾けるのには理由がある」というのは大学時代に師事できた宗倫匡先生のお言葉で何より強く覚えているもの。
当時、
「なんか知らんけど音がきれいじゃない」
「なんか知らんけどここは難しくて何回弾いても成功しない」
「なんか知らんけど曲が覚えられない」
と、上手く弾けないことは「なんか知らんけど、よう分からへんけど」尽くしだった学生の私。
子供の頃から感覚的に弾いていて、感性の部分は良く自由に伸ばして頂いたのですけど、そうした「弾けない理由」を考える力はなかったです。
考える力、というより、発想がなかった。
「うち才能ないわ〜」
「もっと何ヶ月も弾かないと多分ムリ…」
という発想でした。
そんな時、宗先生はレッスンのたびに非常に物理的で論理的な解決方法を解いて下さいまして、必ず
「上手な人には理由があるんですよ、君が今うまくいってないのにも理由があるの」
と、結ばれました。
何しろこちらは先生のレッスンというだけで緊張していますし、弾けないのが分かっているから常に穴に入りたい気分だし、急に考えたことのなかった弓の配分や指の動かし方を提示されてまごついているし…
とりあえず形だけ真似して、という感じでした。
ところが、卒業して何年も経って、レッスンにも通うけれど自分で練習して曲を仕上げることが増えてくると、物凄く「考える」ようになってきました。
もともと、理屈をこね回してあーだからこーだ、こーすればあーだと考えるのはキライではなかったようです。
(数字は苦手で音理どころか確定申告だけであたまが爆発しそうになるけど、物理っぽいことは好きなよう)
「なんで、ここで雑音が入るのか?」
「なんで、この部分はいつまでたっても覚えられないのか?」
などと、行き詰まったら理由を考えるのが楽しくなってきました。
まず、観察します。
弾いてみて躓く理由を考える。分からなければ録画してみたり、あるいはそのテクニックが上手な人、また苦手な人を観察する。
それに、学生当時分からないなりに詰め込んだテクニックの知識を組み合わせると、理由が見えてきます。
「なんで、ここで雑音が入るのか?」
↓
例)弓の重みのかかる根本で移弦をするのに、小指がそれを支える筋力が足りない、またはバランス感覚が不完全だから
「なんで、この部分はいつまでたっても覚えられないのか?」
↓
例)音楽を構成的に理解する、メロディを歌えるようにする、身体が覚える、の三本柱のどれかが駆けているから。
または
例)部分練習の順番がバラバラで、反射的に違う箇所に移行するようになってしまったから
などなど。
最初は、何が良くないのか分からないけど、とにかく上手くいかない。自分でも何が原因か分からない。
どこが指摘されるか分からないまま先生に見ていただいたりして、良く分からないものの頭にとどめつつ見様見真似をする。
それが当たり前だと思います。
だけど、年数を経て観察と原因究明を繰り返していると、ある時、先生から指摘されたことや、本で見聞きしたことなどがピタッと当て嵌まる瞬間があります。
ミステリー小説を読んでいて、トリック解明の前に探偵と同じ証拠に気付いて集められトリックを当てた時の楽しさにも似ています。
着付けはまだまだようやく身に纏えるくらいの私ですが、以前はどうしてお太鼓が崩れてくるのか分からなかったものが、帯の長さという一因に気付き、それをカバーできる方法を探せたというのは自分にとって一つのスタートラインに立てたような嬉しさがありました。
これから恥をかくこともあるだろうし、失敗もあるだろうけど…
本業のヴァイオリンですら、穴があったら入りたい! という状況を何度も経験しているのだから何でも経験してみようと思います。

今夜はグランフロントのコスモポリタンでジャズトリオやっています。
YukiTAKUBO; Violine