ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

2017年1月に行った公演

 今年はできるだけたくさんの興味を持った公演に出かけよう。

 

毎年思うことなのですが、数はともかく良い経験ができました。

 

1月13日 佐久間聡一ヴァイオリン・リサイタル(兵庫県立芸術文化センター

12月の威風堂々in広島で共演させて頂いた広島交響楽団の若きコンサートマスター・佐久間さんが新年早々関西に来られるとのことで、行って来ました。

1734年フランチェスコストラディバリウス"Petersen"使用。

・シルヴェストロフ(1937-):ヴァイオリンソナタ「追伸」

ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番

シューベルト幻想曲ハ長調

コレルリ:ヴァイオリンソナタ長調51の1

(以上曲順)という、曲順がちょっと変わったプログラムでした。一般的にはコレルリなどで始め、ブラームスで終わることが多いです。

個人的に一番佐久間さんの個性と音色が活きていて圧巻だったと思ったのがシューベルトで、コレルリも即興的で良かった。ので、得意な曲で終わるようにまとめたのかと思いきや、現代曲からストラディバリが生まれた時代までを逆行してさかのぼるプログラムだったのだと後から拝見しました。なるほど。

佐久間さんの演奏・ピアノの高井羅人さんとのアンサンブルなどとても良かったです。

広島ではシンドラーのリストのソロが本当に素晴らしく、技術もだけど音色に惚れ惚れしてしまうヴァイオリニストです。

 

1月25日 チョン・キョン・ファ バッハ無伴奏全曲演奏会(シンフォニーホール)

人生3度目に聴きに行くバッハの全曲演奏会です。

ホールではたくさん知人に会いました。クラシックファンも演奏者も注目の演奏会だったのですね。

6曲の無伴奏を全て暗譜で演奏します。

シンフォニーホールの舞台に何もない(ピアノも、譜面台も)光景は初めて見ました。

19時に開演し、ソナタとパルティータ1曲ずつ、つまり2曲ごとに休憩をはさみ、終演は22時を超える熱演でした。

本当に正直な感想を言うと、最初の2曲は弾き直しなどもあり少し聴衆にも緊張が伝わってくる演奏でした。また思いの外、お客さんの咳など雑音を気にする方だなという印象。咳など聴こえるたびにそちらをちらちら見ていて集中力が途切れてしまうのではないかとハラハラしました。

でも、そこで慎重になったり後ろへ行かなかった。

1度目の休憩後、格段に響きが伸びていました。音楽的にもどんどん攻めるようにアグレッシブになり、2番のパルティータの終曲シャコンヌは(さすが一番弾きこんでありそう)と感嘆するほどでした。お客さんとチョンキョンファではなく、バッハと対峙するチョンキョンファを見るようでした。

2度目の休憩後はなぜか1度やり直しがあり、再び不安になったもののそこからは音色も響きも申し分なく。一気に魅せてくれました。

スタンディングオベーションとブラボーコールの嵐、また握手を求めて舞台に駆け寄るファンの姿も。(ダメなんでしょうけど、気持ちは分かる)

流石にアンコールはなし。いやもう立ってるだけでやっとだと思います。

巨匠なだけではない、ぼんやりしたカリスマではなく、人間チョンキョンファのバッハとの・ヴァイオリンとのこれまでの人生や葛藤や克服を見た気がしました。

人生の中でも聴きに行って良かった演奏会に入ると思います。

 

ちなみに、3月には第1番ソナタを私も弾きます^^

チョンキョンファとは並べるべくもないですが、自分なりにやはり生涯通して対峙・対話していきたいなと思います。

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映画「沈黙ーサイレンスー」

実はチョンキョンファと同じ日の朝に行きました。ヘビーな一日でした。

遠藤周作の小説が原作で、音大入学までオペラを観劇したことの無かった私が初めて観たオペラ「沈黙(松村禎三作曲)」があります。

冒頭の迫力あるシーンから始まり、ロザリオの二重唱の美しさなど、一気に弾きこまれたオペラでした。3回観に行きました。

オペラでは炎のイメージが強かったのですが、映画は海が全体に印象的です。

理想と、現実の小さな障害の積み重ねとのギャップに苛立つ様子など、あくまで人間味のあるロドリゴを通して見た日本という国を描いていますが、どちらかと言えば、現在のシリア情勢などについて思いを巡らせるものでした。

やはりある程度の制約のある映画では、ちょっと違和感を覚えてしまう部分もありました。(あんまり躓いては話が進まないので仕方ないけど、村の信徒たちや奉行達が異国語が堪能すぎて、本質的な食い違いとのギャップを感じた所とか…日本人から見ると、処刑を前にしても棄教しなかった理由がもうちょっと違う所にある気がする、と思ったり)

とはいえ、そうした違和感をきっかけに改めて自分の考え方を再確認した所もありました。

それにしても、原作者の遠藤周作氏、本作の監督はじめ製作陣も、本当に良く形にされたものだと思います。

 

オペラから受け取るメッセージと、原作と、また映画ともそれぞれ印象が違いました。

オペラも素晴らしいので、ぜひそちらも観て頂きたい作品です。

もう一つ言うと、一度でいいからオーケストラピットに入りたいオペラです。

 

また来月以降もフットワーク軽く色々行きたいと思います。

 

 

YukiTAKUBO; Violine