ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

練習方法⑤ ~セルフレッスンの付け方~

※2015年6月17日、アメブロの記事※

 

ウィークポイントの可視化

回数をこなす練習

客観的に聴くメリット

と続いて来ました。

今回は客観的に自分の演奏を判断する、セルフレッスンの際に私が実際に取った手順をリポートします。

 

セルフレッスンの手順

①レッスン予定を組む(自分と約束)

②録画・録音(何か一つ緊張する要素を入れる)

③クールダウン(人格を先生へと切り替える)

④セルフレッスン(集中できる環境でスコアを用意)

⑤それを活かして練習


です!


こうして見ると普通の「自分で録音を確認」ですね。

それでも、私にはとっても腰の重い作業でした。

それだけに得たものも多かったので、説明していきます。

 


①レッスン予定を組む(自分と約束)

実はこれが一番ネックになったのでした。

練習方法③で述べたように、実は一番現状をごまかしたい相手が私にとっては自分自身だったんですね。

それだけに、「今日くらい録画してみよう」と思っても、「その前にこことここさらって…」→時間切れ

の繰り返しでした。

私だけかもしれませんが、仕事や遊びの約束など、他人との約束なら守るのに、なぜ自分独りの時間をうまく使えないのか、ついつい予定を後回しにしたり、逆に詰め込みすぎて疲労困憊してしまうのか。

4月の終わり頃ですが、6月の予定を確認していて「この頃には協奏曲全楽章通せてないと怖いな」と思った時に、その時空いていたある日時に「ハチャトゥリアン特訓」と書き込みました。

この日は何があっても絶対丸一日特訓する、と心に決めて。

幸い(?)特にお仕事のオファーなどもなく済みましたが、オファーがあっても断るくらいのつもりでいました。

いつも予定を眺めている時無意識に目に入ったからでしょうか、その1週間前くらいから①~②でまとめた練習が捗り、「特訓の日」を「セルフレッスン」に書き換えることにしたんです。

前日に思ったほど練習できなかったのですが、「明日はレッスンの日!」という意識が働いたので、当日は早起きして書き込んだ時間までに心残りを浚いました。

案外、自分との約束も「スケジュールに書き込む」という可視化によってシンプルな簡単なことになるのかもしれません。

 


②録画・録音(何か一つ緊張する要素を入れる)

これは実践するプレイヤーが多いように思いますが、まず、靴。

靴は本番用のものを履きましょう。

ドレスやスーツなど衣装も、もしかしたら「きつ! 弾けない!」とか「破れた!」とかトラブルがあるかもしれませんが、一番コンディションを左右されるのはステージに根を下ろす足、靴かなと思います。

特に女性はヒールのある靴が多いですから、少しでもバランスが悪くないか予めチェックしておくと本番にドレスの中で靴を脱ぎ棄てるという作業から解放されると思います。

私、浴衣での演奏での下駄と、ギザギザマットの上でのハイヒールをそれぞれ本番中に脱ぎ蹴り捨てた経験があります…



なので今回はステージ用のパンプスを履いてみました。

自宅の住環境の中でも、靴底をよく拭いて、新聞紙でも引けば許されるのではないでしょうか(^-^;)

服装の他にも、例えば本番と同じ場所は借りられないでも、その場所をイメージして舞台袖からステージに歩み出て行く所からイメージトレーニングすると背筋が伸びて気合が入り、本番の緊張感を多少味わえるのではないでしょうか。

最前列に「楽譜を広げた批評家」が座っているつもり、くらいのストレスを加えても良いかもしれません。



その様子を、今回はスマホの動画で撮影。


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いざセルフレッスン開始、その前に

③クールダウン(人格を先生へと切り替える)


レコーディングが終わったら、ちょっとクールダウンしてから確認します。
30分でも1日でも良いですが、すぐに確認すると、頭はどこかさっきの演奏モードのままです。

演奏モードで確認すると、

客観的な感想ではなく、
思ったより弾けてる!
思ったよりひどい!!

という安堵や失望の感情だけが沸き起こって消えていくことが多いです。

なので、少し頭を冷やします。

 

④セルフレッスン(集中できる環境でスコアを用意)

ポイントその1:
集中できる環境で


さて、私は今回スマホとイヤホンと楽譜、鉛筆と付箋を持ってカフェに行きました。

先生のレッスンの録音を確認するときも、よくカフェでやっていました。

それというのも、自宅には誘惑や用事が多過ぎるからです。

ちょっと止めて洗濯入れちゃおうとか、メールが来たついでにsns見ようとか。

カフェの方が、1時間2時間集中して一気にできます(当社比)

その理由ですが、適度な人目とコストがかかっているせいではないかと自己推察しています。

カフェって、テイクアウトもできますが基本的には場所代の含まれた料金ですよね。
この1時間で500円払っているから有意義に過ごして元取ろう! と思って集中できる…と書くとなんかセコくてイメージダウンでしょうか笑

まあ正直に申告しておきます。


ポイントその2:
ここぞとばかりに、スコア

無伴奏曲なら仕方ないけれど、セルフレッスンの時はここぞとばかりに、協奏曲でもソナタでもバンドスコアでも、とにかく全体の分かるスコアを使用します。

 

無伴奏だったらば、既に演奏に支障を来すくらいにぐちゃぐちゃに分析を書き込んだコピーがあるはず(理想)なので、そちらで。

スコアをよく見て勉強して、と簡単に言いますが、いつそんなに見るでしょうか。
やはり、パート譜にかじりつく時間の方が長く、気になった時だけ確認する、くらいになってしまいがち。

ここぞとばかりに、全体を把握している指導者になりきります。

これも、生徒さんにレッスンを付けていて気付きました。

生徒さんのレッスンでは、生徒さんがパート譜を見ながら弾くのでお持ち頂いたピアノ譜を借りてああだこうだとアドバイスするのですが、どちらかと言えば技術面よりも「ピアノ譜見てくれたら分かるのにな~」ってことがより気になるんです。

音程に四苦八苦する前に、聴けばられるベース音が伴奏にあることとか。

自分の解釈ニュアンスの前に、「絶対あわせられない」音型が伴奏にあるとか。

どこを出してどこを抜いたら良いのか。



で、やっぱり付箋です。

今回はすぐにマーキングをはがすためではなく、

いちいち思ったことを書き込んで全体的な流れを聴くことを止めないため

に使います。

つまり、聴くほうも最初からぶつ切りで要所要所だけに目くじら立てるのではなく、まず通して聴きたいのですね。


全体的にどれくらいできているか?

曲全体の中でメリハリはあるか?

客観的に、聴いていてエキサイトできるのは、逆にだれるのはどこ?


なのですが、いちいち全部覚えていられません。

なので、また気になったら付箋を貼って行きます。

 

カラー分別は大体ウィークポイントの可視化と一緒で、

ピンク=ここもっと弾きこまな危ないで
黄色=音程注意しいや
緑=表現がいまいち
紫=その弾き方、本番危ないで

みたいな感じです。

関西弁の方が自分に突っ込みやすいんです。

そうして一通り聴き終わったら、楽譜の最初に戻って、付箋の箇所をチェック。

 

今度は付箋の上に、具体的な注意点を書き込みます。

録画をプレイバックもしますが、大体チェックだけしておけば「何が気になったか」は覚えているものです。

この時、本当にレッスンのように、自分に問いかけます。

「なんでこのフレーズがぶつ切りになったん? 弓の問題なん? それともそういうイメージなん?」

「…何も考えてなかったです」

「でもちょっとスコア見てちょうだい、そうするとフレーズの終止はずーと先やん? そこを知っておかないとね」

自問自答。

そうすると、一人で楽譜を眺めて

「どうやって弾こう? 楽譜を解釈するって言うけど、何をどうすれば良いの?」

と悩むことが、一つ一つ具体的な解釈としてはっきりしてくるんです。

 


⑤それを活かして練習

不思議と、ウィークポイントの可視化では技術的なことばかりが目についていた=表現者の主観

だったのが、セルフレッスンをすると、不自然な強弱や不自然なクセといったフレージングの問題など=客観的なことがたくさん見えました。


私、学生のころは

田久保節


と言われる独特のクセを持つを言われておりました。

でも、何が変か分からないんですよ。

「それは田久保節やで(笑)」と言われても、何がダメか分からないし、音程やリズムのように○か×のあるものはともかく、表現のクセ、って自分が気づいてないからクセなんですよね。

「それが良い時もあるねんで!」

って言われても、なんかもやもやしていました。

で、セルフレッスンで気付きました。

独特の節回しでも、良い時は聴いていて気にならないんです。

でも、やっぱり不自然なものっていうのは気になる。ひっかかる。

ちょっと独特だな、と思っても「へーいいな」って素直も思える所もありました。

それはそのまま残して、直前に聴いて頂く先生や指揮者の前に持って行こうと思います。

 

それでは、また色々練習方法や音楽演奏について思うこと、述べていきたいと思います。


YukiTAKUBO; Violine