ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

読書日記

読書日記27『三毛猫ホームズの狂死曲』

三毛猫ホームズの狂死曲 新装版 (光文社文庫) 作者:次郎, 赤川 光文社 Amazon 酒盗、というのは魚の塩辛のことで、こいつのせいで酒が進んでしまった、こいつが酒を盗んだのだ、と自分のことを棚に上げて塩辛の美味さに責任転嫁をした呼称だが、それにならえ…

読書日記23『ツバキ文具店』

小川糸『ツバキ文具店』幻冬社,2016年。 ツバキ文具店 作者:小川 糸 幻冬舎 Amazon 私自身の最大のコンプレックスとも言えるのが、悪筆である。 未だに自分で書いたメモを後から「何て書いたんだ、これは」と悩むことも少なくない。手紙を書くことは少なく…

読書日記22 『サラエボのチェリスト』

サラエボのチェリスト 作者:スティーヴン ギャロウェイ 武田ランダムハウスジャパン Amazon スティーブン・ギャロウェイ,佐々木信雄訳『サラエボのチェリスト』2008年,ランダムハウス講談社 * 1992年5月27日、ボスニア内戦下のサラエボ、バセ・ミスキナ通…

読書日記21 『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』 

「ヒロシマ」が鳴り響くとき 作者:能登原 由美 春秋社 Amazon 能登原由美,2015『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』春秋社 * 広島、長崎、ではなく「ヒロシマ」「ナガサキ」と表記するときは、被爆地としての意味合いを持つ。 本書もやはり、被爆地「ヒロシマ」…

読書日記20 『管理社会の音楽』

ウルリヒ・ディベーリウス,渡辺健 訳『管理社会の音楽』音楽之友社,1979年(Dibelius, Ulrich. 1971. Verwaltete Musik. München: Carl Hanser Verlag) 「一体啓蒙はどこからはじめたらよいのか? 一体どこで、批判の半分でも理解してくれるのだろうか?…

読書日記19『バッハ』

バッハ (カラー版作曲家の生涯) (新潮文庫) 作者:隆一, 樋口 新潮社 Amazon バッハの伝記は今年に入って何冊目だろうか。(シュッツとはえらい違いである) 研究され尽くされた上で更に研究されつつある作曲家だけあって、大方の生涯にさほど違いはない。 だ…

読書日記18 『ふろしき文化のポスト・モダン』

ふろしき文化のポスト・モダン―日本・韓国の文物から未来を読む 作者:李 御寧 中央公論社 Amazon 『ふろしき文化のポスト・モダン―日本・韓国の文物から未来を読む』李御寧,1989年,中央公論新社 ✳︎ 「一本の線のみでは意味は生まれない」「これに表現を与…

読書日記17 日蝕

日蝕 作者:平野 啓一郎 (unknown) Amazon 《日蝕》(1998)平野啓一郎 日蝕。 「金髪の現役京大生にして最年少芥川賞受賞」、「三島由紀夫の再来」、当時、一世を風靡した作品だった。 今より娯楽の少ない時代だったから、私の周りでもかなりの浸透力で読ま…

読書日記16 マイセン 

マイセン 秘法に憑かれた男たち 作者:ジャネット・グリーソン 集英社 Amazon グリーソン,ジャネット『マイセン 秘法に憑かれた男たち』南條竹則 訳.集英社,2000年。(原作:Gleeson, Janet. THE ARCANUM. 1998. Christopher translation rights) 何年か…

読書日記15 不滅の大作曲家 シュッツ

シュッツ (不滅の大作曲家) 作者:ロジャー・テラート,店村新次 音楽之友社 Amazon 『不滅の大作曲家 シュッツ』ロジェ・テラール著 店村新次・浅尾己巳子 訳 1981年、音楽之友社 (Tellart, Rodger. HEINRICH SCHÜTZ. Paris: Editions Seghers. 1968) ハイ…

読書日記14 『日本における媒介された、また生の音楽』

Keil, Charles. (1984) Music Mediated and Live in Japan. Ethnomusicology 1984, vol.28, pp.91-96 今回は論文。6ページの短い論文だが、英語で読み切るのはなかなか気力が必要だったので読破記念。 アメリカの民族音楽学者である論者は、そもそも自分がこ…

読書日記13 『オランダのモダン・デザイン』

オランダのモダン・デザイン: リートフェルト/ブルーナ/ADO 作者:クラス,ライヤー,隆, 新見 発売日: 2016/09/26 メディア: 単行本 クラス,ライヤー、新美隆。『オランダのモダン・デザイン リートフェルト/ブルーナ/ADO』2016年、平凡社 『うっせぇわ』の…

読書日記12 『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』

横田真由子,2016『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』クロスメディア・パブリッシング 実家で転がっていたら「これでも飲みなはれ」ということで母に手渡された。 私と母は、揃って「こういう本や特集の組まれた雑誌やドミニック・…

読書日記11『無伴奏』

無伴奏──イザイ、バッハ、そしてフィドルの記憶へ 作者:小沼 純一 発売日: 2008/11/22 メディア: 単行本 小沼純一『無伴奏 イザイ、バッハ、そしてフィドルの記憶へ』アルテスパブリッシング,2008年 ーーひとりでありつづけることをひきうけるためにーー197…

読書日記10 『フーガとソナタ』

専門書の返却期限が迫ってきてぎゅうぎゅうに詰め込んでるけどそろそろショートミステリーなんか読みたいしもっと欲を出せばゲームしたい フーガとソナタ: 音楽の2つの文化について 作者:ハルム,アウグスト 発売日: 2017/06/08 メディア: 楽譜 フーガ、とい…

読書日記9 『バッハ 無伴奏ヴィオリン作品を弾く』

バッハ 無伴奏ヴァイオリン作品を弾く バロック奏法の視点から 作者:ヤープ シュレーダー 発売日: 2010/01/21 メディア: 単行本 何年かぶりの再読になる。 バロック奏法からバッハの無伴奏ヴァイオリン作品の演奏法を解剖する解説書。 私ごとだが、現在、バ…

読書日記8 『漱石が聴いたベートーヴェン』

『漱石が聴いたベートーヴェン 音楽に魅せられた文豪たち』 瀧井敬子 著 漱石が聴いたベートーヴェン 音楽に魅せられた文豪たち (中公新書) 作者:瀧井敬子 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 秋蔦の色の濃きに黒斑入りたるヴァイオリンーー島崎藤村 ✳︎ …

読書日記7 『音楽の危機』

『音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日』 岡田暁生 著 音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日 (中公新書) 作者:岡田暁生 発売日: 2020/10/30 メディア: Kindle版 帯には、無人の客席いっぱいに観葉植物を敷き詰めたバルセロナ・リセウ大劇場での弦楽四重…

読書日記6 『白い病』

『白い病』 カレル・チャペック 著 阿部賢一 訳 白い病 (岩波文庫)作者:カレル・チャペック発売日: 2020/09/16メディア: 文庫 『白い病』は五十歳前後の人間のみが発症し、皮膚に白い斑点が顕れ、やがては腐食し死に至る架空の伝染病だ。大学病院の医療関係…

読書日記5 『魂の錬金術』

心がガチガチに武装していると感じたら、自伝と併せてお勧め。自伝の方がサクサク読めるけど、アフォリズムは本棚に置いておきたい一冊。文庫化希望。 魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集 作者:エリック ホッファー 発売日: 2003/02/01 メディ…

読書日記4 『新訳 ペスト』

読まないといけないと思っていたもののなかなか気が進まなかった。 昨年10月に刊行されたばかりのこの新訳版に出会えて良かったと思う。 とても読みやすく、考証にも注意深さが伺える。 新訳ペスト 作者:ダニエル・デフォー 発売日: 2020/09/18 メディア: 単…

読書日記3 『エリック・ホッファー自伝』

こんなにサクサク読めると思わなくて、うっかり半日を費やしてしまった エリック・ホッファー自伝―構想された真実 作者:エリック ホッファー 発売日: 2002/06/01 メディア: 単行本 『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』 中本義彦 訳 この本について…

読書日記2 『45°』

『45°』 長野まゆみ 著 45° 作者:長野 まゆみ 発売日: 2013/03/29 メディア: 単行本 浮揚員、という言葉をご存知だろうか。 私はもちろん知らなかった。そして、この短編集の中の同題の一編によってその何たるかを知り得た。語り部が私と同い年だったことで…

読書日記1 『あるヴァイオリンの旅路』フィリップ・ブローム

読書感想文が苦手な私が、練習として読書日記がわりに書評を書いてみるシリーズ〜 1冊目はこちら! あるヴァイオリンの旅路: 移民たちのヨーロッパ文化史 作者:フィリップ・ブローム 発売日: 2021/02/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) 最近法政大学から…