ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

2019.07.09.【アイスミーティング】チェコ・ドイツ日記⑧

ミクロフ後編の前にちょっと日記更新。

 

なぜ後編が滞っているか。

寮のWi-Fiが弱くて、7分の動画を送信するのに24時間くらいかかっているからです……

 

昨日から本格的にブラームスベートーヴェンソナタに入りました。

 

朝一レッスンに入った瞬間、先生が

 

「オメデトウ! たくさんのオーディエンスから昨日のシャコンヌの評判を聞いたよ!」と言ってくれましたが、先生のテンションとは裏腹に

 

「ありがとう、そしてミクロフは素晴らしかったので、今日の友妃はdoesn't workです。なぜなら今日の友妃はモラヴィアワインでできているからです」

 

という、つまり二日酔い状態。

 

でも許してくれました笑

 

ピアノのウラジミールはピアノの難曲2曲同時に出されて

 

「ピアノムジュカシイヨォ〜、オジイチャンチカレタヨォ〜」(原文ママ

 

とごねていたので、肩を揉んであげました。

「指圧行きたい(来日経験あり)」そうです。

 

とはいえとっても素晴らしいピアノです。

クロイツェルはゆっくり細かく合わせる練習もさせてくれました。

このゆっくり合わせは、林泉先生が10年来口を酸っぱくして言われ続けている練習なのですが、なかなか付き合ってくれるピアニストはいない。

 

しかし、どの国に行っても思うんですが、

 

林泉先生が未だに一番厳しい気がする。

 

翌火曜日、つまり今日は「前半はピアノなしで後半ブラームスのリハーサルやろう」と言われていたので、とある楽譜を持って行きました。

 

それはモーツァルトの協奏曲のカデンツァ(ジャズでいう書きリブに相当する即興演奏の部分、古典協奏曲においては大体名手による定番のものがあり、ロマン派以降の協奏曲においてはほぼ作曲家が書き記している)、自作版。

 

もしかしたらモーツァルトの協奏曲を弾くチャンスがあるかもしれないのですが、そこでやりたかったのが、自作のカデンツァを弾くこと。

 

チック・コリアモーツァルトを弾く時自作のカデンツァを演奏するし、お客さんだってチック・コリアで聴くからにはオリジナルのカデンツァを期待しますよね。

 

私もクラシックとジャズ奏者を名乗っている以上、オリジナルのカデンツァを演奏したくなったのです。

 

カデンツァ書いたのは実に5年振りくらい。それもドイツにハイドンの協奏曲を持って行ったとき、定番のカデンツァがない曲なので「どれが良いですか」と聞いたら「作れば?」というノリで書いたのみ。

 

本番前提で書くのは始めてです。

書いたものの、この先生の貴重なレッスンでオリジナルのカデンツァを見てもらうのが良いのかどうか……、というのは言い訳で、何にと言われるか怖い気持ちで結局未だに見せられませんでした。

 

が、ミクロフのワインセラーでの出来事が私の創作意欲に火を着けたのです。

「良ければ、モーツァルトの本編は置いといて私の自作のカデンツァを見てください」

言った。

 

ん? と楽譜を見る先生。

「完全なオリジナル?」

「アノー」(yes)

「スゴイ! さあ弾いてみて」

 

こういう所ヨーロッパって良いですね。

 

日本的な感覚で、「ヨアヒムの素晴らしいカデンツァが存在するのになぜわざわざ自分で書くの?」と言われたときのためのスピーチまで練習していましたが、あっさり弾くことになりました。

 

「スゴイ! 良く書けてるし、全く新しいカデンツァを一つ聴けた僕はラッキーだ! 弾き方だけ話し合おう」

 

ということで、カデンツァに使ったテクニックのためのアドバイスと、

「テンポが一定だから、大きな転調や重要なコードの時にチョットマッテしよう」

というようなことを。

 

なんか先生が弾いたらいい感じになり、ちょっと更にアイデアが出てきたので少し手直ししました。

披露できたら良いなぁ。

 


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夕方、先生の奥様の招待でクラス全員でアイスクリームを食べに行きました。

毎年恒例の「アイスミーティング」なんだそうです。

 

その帰り、近くにあったフランス系ファストファッションの店でセールをやってたのでチェックのパンツを買いました。今年は服買わないイヤーにしていたんですが、70%オフで日本人サイズが残ってたから…

 

明日は学校主催のアンダーグラウンドツアーです。楽しみ!

 

 

YukiTAKUBO; Violine

2019.07.07.【ミクロフでシャコンヌを】チェコ・ドイツ日記⑦

※動画あります※

 ↓ ↓ ↓ ↓

 

いよいよやってきた、日曜日。

 

朝からペース配分には注意しつつ、ひたすらシャコンヌをさらう。

 

夕方、ミクロフへ向かうバスが出発しました。


ミクロフはおとぎ話の国のような街でした。

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山の上に城塞のようなお城がある。

で、美しくも可愛い建物だけをぎゅっとコンパクトにまとめたような印象で、私がこれまで世界一愛していた街オーベルストドルフにちょっと似ています。

 

コンサートはここの音楽学校のホールであるらしい。

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お客さんぞろぞろ。

階段も可愛い。

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可愛い。

 

さて。

外に出ると内のことが見えてくる。

職人気質なチェコ に来て見えてきたのは、私の音楽のコアって何なんだろうと考えたら、

「情念」

なんではないかと。真面目な話。

私の演奏を知っている人の中には、「ええ~」と思う人もいるだろうし、「その通り」と思う人もいると思うのです。

 

が、自己認識でいうと。

私の一番の特徴って「正確さ」でもなければ「超絶技巧」でもなく、「優雅さ」「エスプリ」でもないだろうと。

 

で、「情念」。

私のシャコンヌも今のところ「情念」で構成している気がする。

MCで良く言うように、「一人の人間の一生」というテーマはあるものの。

 

で、職人気質なチェコの人を前に、自分が保てるだろうか? というのが今回の挑戦でした。

 背中を押してくれたのは前日先生がレッスンで言ってくださった「とても内面的な演奏で、僕は聴いていて自分の意識が深いところへ深いところへと向くのを感じた。きっとお客さんもそうだろう」という一言。

 

人間、積み重ねて来た以外のことはできないもの。

急に渋い職人技を見せようといったってそうはいかないし、今まで地下鉄をはじめ、TSUNAMIヴァイオリンやヘルパー会議や……自分の手で積み重ねて来たものを出すだけです。

 

その結果がこんな感じ。

 

終わったあと、たくさん素晴らしい感想貰ったのですが、自分でも今までにしたことがない演奏になったと思います。良し悪しとは別に。

 

いくつかのミスタッチを除けば、今回のチェコ滞在で一番ベストだと思う形の演奏ができたと思います。

ただ、この弾き方はチェコの空気や響きという環境があってこそ維持できるものだと思うので、日本に帰って弾き続ける内に変わらないことはないと思います。

 

なので、芦屋のものと同じく今の自分の演奏の記録としてノーカットで公開しようと思いました。

時間がたって見直したら「うわあああああ」と思えたらそれはそれで、成長したことになるし、「ええ…なんでこの時こんな弾けてるの…」と思うようになってしまわないように。

 

チェコ日記ミクロフ編は後半に続く。

 

YukiTAKUBO; Violine