ヴァイオリニスト田久保友妃のブログ「四絃弾き。」

関西を中心に活動中のヴァイオリニスト。「バッハからジャズまで」をテーマとした幅広いレパートリーを活かし、「ヴァイオリン独演会」シリーズを全国各地で展開中。2020年3月セカンドアルバム『MONA LISA』リリース。http://yukitakubo.com/

ベートーヴェンのコツ

書き初めの日です。
 
もともと、楽器の練習方法レポートをメインに始めたこのブログ、最近は個人日記のような記事も多くて反省中でした。
 
今年の書き初めとして、練習方法というか、ベートーヴェンソナタに連続で取り組んできた中で気付いたことをまとめてみることにしました。
 

まだまだ演奏家としては若輩者の私が簡単にまとめられることではないというのは承知の上で、ベートーヴェンソナタ(協奏曲はまた別の点が)に取り組むコツをまとめてみます。

 

また、年末に開催したツィクルスの感想を、ヴァイオリン職人の渡部宏さんがいつもながら暖かい視点で記事にして下さっています。

ameblo.jp

 ありがとうございます(*^_^*)
 
こんな応援をしていただけて、今年の書初めはベートーヴェンにしようと思いました。
 

 

メトロノームを使って練習を始める

 
ベートーヴェンは、例えば協奏曲だとか、ヴァイオリンの演奏ありきでできている器楽曲にある、音楽的なテンポの変化とはまた別の、「弾ききるために多少テンポが崩れる」現象は全然通用しないのです。
基本はインテンポ。
メトロノーム記号を自ら記した曲もあるくらいです。
 
ベートーヴェンソナタにおいては、まずインテンポで弾けた上で、自由さが来る。
 
そう思っています。
 
最初からインテンポで弾けるような楽章もありますが、そうでない難しい所のある曲でも、まずはテンポを落としてメトロノームをかけて練習します。それを徐々に上げていく。
弾き込んでからインテンポに嵌めるより、より、自由につかめると思います。
 

・ピアノの音色に合わせる

 
有名な「スプリング」「クロイツェル」の冒頭などは、ヴァイオリンでなければならなかったと思います。
 
が、全10曲の内には正直な所、「これはヴァイオリンである必要はない」と思われるソナタも中にはあるのです。
何しろ、ベースはピアノの方です。
 
スタッカートや短く切る4分音符などは、ピアノの音色に寄り添う。
音の切れるタイミングなども、いくらでも弓で伸ばせるヴァイオリンが主導するのではなく、ピアノに合わせます。
 
今回のツィクルスでは、私はマックス・ロスタルの解釈に全面的に従っています。彼の解釈を勉強するのに、全編に渡って実践してみるのが良いと思ったからですが、彼はこのソナタの中のスタッカートについてマルテレを支持しています。
「今日、マルテレを軽視する奏者が多いのが残念である、この奏法がもっともピアノの音色に合うのに」ということで、確かに現在は古典であまり上半弓を使って弾くことはないように思いますが、一つの手段として非常に有効だと思います。
 

・弾きにくい音型は諦めて、命マークで

 
ヴァイオリンに弾きやすい音型、ピアノに弾きやすい音型というのは存在します。
 
例えば、ショパンにはヴァイオリンソナタは存在しませんが、ショパンの協奏曲に乗ったことがあります。
 
ものすごく弾きにくかったです。
調整も、イ調、ニ調、ト調がお得意でハ長調やフラット系はちょっと苦手かな? というヴァイオリンがそれを通り越して青ざめる調整。
また、弦をまたがないと弾けない旋律を美しくレガートに弾くことが求められたり、5度の音の並び(開放弦でもなければ、指の拡張か並行に抑えるかどちらかしかない)が多かったり…
 
ベートーヴェンソナタ群にも、そうしたピアニスティックな音型がとても良く出てきます。
 
そうすると、どの指使いでやったら良いかなど工夫するのですが、
 
中には、
 
答えなし、どうやってもこれは難しい!
 
というのもあります。
 
そういう時は、諦めます。
弾くのを諦めるのではなく、弾きやすい方法を考えることを諦めます。そして、仕方ないので何とか死ぬ気で弾きましょう。
 
 「死ぬ気で弾く」とか「命マーク」「命かける」というのは、本来あまり気軽に口にする言葉ではないかと思いますが、私の周辺では割と一般的な、一つの音楽用語になっています。
 
「頭で考えてもどうしたってもっと良い方法の見つからない場面だけども、とりあえずなんとかしてやるという気でなんとかするつもりでやる!」
 
 という具合のニュアンスです。
 
 

・強弱の表現にはそれこそ命マーク

 
前のツィクルスでも少し話題にしまして、その前に師匠のご主人から聞いた話なのですが、
ベートーヴェンは、生徒に対して、音の間違いはさほど厳しくなく寛容だった。でも、強弱記号の間違い、フォルテ、ピアノの表現の間違いというのは、ミスではなく根本的な解釈をミスしていることになるからとても厳しかった」
ということです。
 
これを念頭に置いておくと、取組むのがぐっと楽になりました。
楽ではないのですけど、何から手を付けて良いやら…というとまどいがなくなります。
 
そして、強弱というのはやはり感情の起伏に繋がるので、楽曲に感情移入しやすくなります。

 

他にも、スコアを見る、終止を知っておく、などありますがそれはどの作曲家でも同じです。

ベートーヴェンで特に顕著な特徴をまとめてみました。

 

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こちらの準備を進める自分への言葉、の意味合いも込めて。

 

 

YukiTAKUBO; Violine